TOKYO CHAINSAW

偏食映画、食い散らかしブログ。

ジョン・ウィック

怒らせちゃいけない人を怒らせて、悪党共が血祭りにあげられる、「アジョシ」、「イコライザー」、「ヒストリーオブバイオレンス」と同系統の、「てめえは俺を怒らせた」系ムービー。

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病気で奥さんを亡くしたばっかの元ヒットマンが強盗に襲われ、愛車を奪われ、ついでに奥さんがプレゼントしてくれた子犬を目の前でぶち殺されるところから幕開け。


あとはもう、血の海ですよ。


無慈悲に至近距離からのヘッドショットで次々と悪党共を葬りさるキアヌ兄貴にしびれる。

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ちなみに、この物語は復讐ものとして扱われてるけど、救いのないネガティブな報復の話ではなく、生きる希望を失った元闇の住人が自分の生きる道を取り戻すために戦う、とてもボジティブな物語だと思った。


ウィレム・デフォージョン・レグイザモなどの味ある名優がたくさん出てるのも良し。

バードマン

アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ監督、脚本作品。

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現実と虚構、心の内と外、様々な方向軸を行きつ戻りつ、入れ子構造の物語が、全編ワンカット風の映像手法で進行していく。

今までのイニャリトゥ監督作品とイメージ、テイストが丸っきり異なる作品。

いつもの監督作品は過去と未来、群像の心情が縦横無尽にカットアンドペーストされていき、一つの真実に帰結していくスタイルが多い。
さらに、映像と音楽の「間」が、登場人物たちの心情をあぶり出していく。

今回の作品は、カットアンドペーストスタイルではなく、マルチトラックスタイル。

つまり、音楽でいうところの複数トラックのレコーディング&再生で、何重にも重なる音たちが、凄まじい密度で襲って来る様な、エモーションの嵐の中に、ずっと身をおいている感覚。

今回の作品のメインサウンドトラックは、ジャズドラマー アントニオ・サンチェスが手がけている。

その隙間の無い、音の集合体が、映画の密度をさらに密なものにしている。

とにかく、間がない。

常にアドレナリンが出っ放し。

この感覚はダーレン・アロノフスキー監督の「ブラックスワン」でもあったけど、映像と音に追い詰められ、半ば強制的に主人公の心理を追体験してしまう。

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過去の栄光ではなく、新たな成功を得ることで本当の自分を取り戻そうとする老俳優の数日間の戦いを描いた本作品。

最後に、彼は本当の自分を取り戻せたのか……観る人によって実に様々な解釈ができる。

タッチとしては、かなりコミカルな印象。

いつものイニャリトゥ監督作品を期待すると、あれ?と思うかも。
ギジェルモ・アリアガ脚本のが好きなのかも。

狂気じみたカッコ良さが最高。

語りたいことがたくさんある映画。
でも、観ていて非常に疲れるので、何回も観たいとは思わない。

ノー・カントリー

暴力の歴史は、常にその時代を生きる人間の想像を超えた暴力の到来により、塗り替えられていく―。

人間の世界のおける、正義と悪の世代交代を描いた作品。

 

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原題は、『No Country for Old Men』、「老人に国なし」。
原作は、コーマック・マッカーシーの『血と暴力の国』。
コーエン兄弟監督作品。



麻薬組織の壮絶な殺し合いが起きた現場で、幸運(?)にも大金を手に入れた若者ルウェリンと、彼を狙う最凶の殺し屋アントン・シガーとの追跡劇が進行していく、この映画。

クライム・アクション?サスペンス?


……と思いきや、物語の本筋は、その2人の闘いを追う1人の老保安官の、揺れ動く「正義の心」について。

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かつて強い“正義の炎”を燃やし、悪を倒して来たベル保安官は、自身のテリトリーで起きたとある殺人事件から、理解不能な“悪”の存在を感じる。

その悪の正体こそ、ルウェリンを追う殺し屋アントン・シガーであり、殺人事件は、ルウェリン追跡中のアントン・シガーが起こしたものだった。

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アントン・シガーには、人間が普通に持っている利害感情など一切関係なく、彼は自身が作り上げてきたルールにのみ従って動く。

ルールを破ったものは、依頼人であろうと始末する。

アントン・シガーは一つの“記号”として、この世に存在し、殺し屋という姿で人間に関わっていく。

それはまるで、「自然の猛威」や「死」そのもの。



引退間近のベルは、その悪の存在を知り、弱まりつつある自身の正義の炎を改めて実感する。
「もう自分の出番は終わり、自分の手には負えない悪がはびこりつつあるのだ」と。


しかし、ベルは若きルウェリンの危機を見逃すわけにいかず、葛藤しながらも、2人の影を追い続けるが、常に後手に回り、いつまでも2人に追いつくことはできない。


行き場や居場所を失った、消えかかる正義の炎は、決して交わることのない若き暴力の衝突を、ただ傍観者として見つめるのみ。
ベルの「正義」としての存在理由は、そこにはすでになくなっていた。


「老人に国なし」。


ベルが2人に辿り着いた時には、パーティーはすでに終わっているのだった。

 

12モンキーズ

ブラッド・ピット兄貴がキレキレの演技をみせてくれる、人類滅亡ムービー。

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人類の99%を死に追いやったウィルスの根源を断ち切るために、2035年から1990年にやって来た男、コール。

彼は、そのウィルスを撒いたとされる、謎の軍団『12モンキーズ』の行方を追う中で、医師キャサリンに出会う。

12モンキーズと、人類を滅亡へと追い込むウィルスの正体を突き止めるべく、動き回る二人を待っていたものはー。

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過去を変えようともがくうちに、起こる数々のフィードバック現象。
人間が過去を変えることは可能なのか、そして、過去を変えたところで、待っている未来は明るいものなのか。

パズル的に展開する、時と精神の地獄めぐりの中で、運命への接し方について考えさせられる作品。



ちなみに現在、ドラマ『12モンキーズ』もスタート。

映画のレトロフューチャーな世界観はゼロなので、あのギリアム的な雰囲気が好きな人は違和感あるかもだけど、リブートとして全く別物として楽めるとは思う。

キャサリンのファースト・ネームが、映画で引き合いに出される「カサンドラ症候群」のカサンドラとなっている。

映画作品に対する愛情が感じられるので、ドラマならではのディティール作りに期待。

ウォーム・ボディーズ

ゾンビ映画があふれにあふれ、一周半して辿りついた次世代ゾンビ映画……。

 

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……とは言い過ぎかもしれないけど、純粋にゾンビを題材にした作品として、楽しめる要素がたっぷり入ってる、デッドボーイ・ミーツ・リヴィングガールもの。

 

ゾンビ青年Rは、いつものようにゾンビ仲間たちと街へ人間を食いにぶらり。

そこで襲った人間たちの中にいた一人の女の子・ジュリーに一目ぼれしてしまう。

死んだかに思えた彼の体の中に、変化が訪れる。

結果、Rはジュリーを助け、彼の住むゾンビコミュニティへ。

 

Rとジュリーの関係性は周囲にも影響を与え、ゾンビ仲間たちの中にも忘れられた感情が蘇りつつあった。

しかし、ゾンビのなれの果てである「ガイコツたち(BONEYS)」や、ゾンビを憎む人間たちによって、翻弄される若い二人の運命。

二人の仲は、ゾンビたちは、人間たちはどうなってしまうのか―。

 

といった内容。

 

主役のゾンビ青年Rを演じるのは、『アバウト・ア・ボーイ』『シングルマン』のニコラス・ホルト。青白い死人顔が美しい。
ゾンビ→人間の間をいったりきたりする、すごく難しい役周りだと思うけど、シリアスさとファニーさの両面をとても魅力的に演じてる。

 

ヒロインのジュリーを演じるテリーサ・パーマーは『アイ・アム・ナンバー4』でナンバー6役を演じてたけど、クールながらもたまに見せるあどけない雰囲気が良い。
彼女の芯の強い感じが、頼りない感じのRとマッチしてた。

 

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ちなみに、「ただのコメディホラーで、ゾンビホラー要素は適当かな」と思っていたら、意外と下地となるゾンビ世界のテイストはしっかりしていて、「ガイコツたち」は「おっかねえ!!」となる怖さがちゃんとある。

 

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よくあるゾンビ映画に飽きた時におススメしたい一本。

 

 

 

ザ・デイ

荒廃した世界を歩く、5人の男女。
武器を手に持ち、何かに脅え、歩き続ける。

やがて、一軒の農家に辿り着いた彼らは、束の間の安息を手に入れたかに思えたが、突然の惨劇と共に、長く恐ろしい1日が幕を開ける。

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1日、1箇所、1シチュエーションで描いた、ソリッドな終末系ムービー。

ゾンビから逃れてる?ウィルス感染者から逃れてる?一体?
蓋をあけてみたら……彼らが恐れている対象が、怖い……。

詰め込み気味だけど、心地よいテンポで最後までストーリーが進む。

 

ヴァルハラ・ライジング

「ドライブ」のニコラス・ウィンディング・レフン監督作品。

自分を囚えていた蛮族から解放された奴隷戦士「ワン・アイ」が、キリスト教徒のヴァイキングたちと一人の少年と共に、聖地を目指す旅に出る。

長い漂流の果てに彼らを待っていたのは、約束の地か、それとも……。

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圧倒的な静寂と、自然、暴力のコントラストが美しく、そして、凄まじい眠気が襲ってくる映画。

寝落ちを繰り返し、3回目のトライでようやく最後まで観れた。

でも、感想は「退屈」ではなく、感動だった。

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人間もまた自然の一部であり、人間の理屈や都合、思想、宗教とは関係なく、全ては、ただ「決められた通りに、なるように、そうなっていく」。
そんなメッセージを感じた。

劇中、一言も言葉を発しないワン・アイが最後に悟った表情で、すべてを物語るシーンで震えた。

主演のマッツ・ミケルセンは、最近では「羊たちの沈黙」のハンニバル・レクターを主役においたドラマ「ハンニバル」でレクター役を演じている。

独特の凄み、雰囲気のある役者さんです。