バードマン
アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ監督、脚本作品。
現実と虚構、心の内と外、様々な方向軸を行きつ戻りつ、入れ子構造の物語が、全編ワンカット風の映像手法で進行していく。
今までのイニャリトゥ監督作品とイメージ、テイストが丸っきり異なる作品。
いつもの監督作品は過去と未来、群像の心情が縦横無尽にカットアンドペーストされていき、一つの真実に帰結していくスタイルが多い。
さらに、映像と音楽の「間」が、登場人物たちの心情をあぶり出していく。
今回の作品は、カットアンドペーストスタイルではなく、マルチトラックスタイル。
つまり、音楽でいうところの複数トラックのレコーディング&再生で、何重にも重なる音たちが、凄まじい密度で襲って来る様な、エモーションの嵐の中に、ずっと身をおいている感覚。
今回の作品のメインサウンドトラックは、ジャズドラマー アントニオ・サンチェスが手がけている。
その隙間の無い、音の集合体が、映画の密度をさらに密なものにしている。
とにかく、間がない。
常にアドレナリンが出っ放し。
この感覚はダーレン・アロノフスキー監督の「ブラックスワン」でもあったけど、映像と音に追い詰められ、半ば強制的に主人公の心理を追体験してしまう。
過去の栄光ではなく、新たな成功を得ることで本当の自分を取り戻そうとする老俳優の数日間の戦いを描いた本作品。
最後に、彼は本当の自分を取り戻せたのか……観る人によって実に様々な解釈ができる。
タッチとしては、かなりコミカルな印象。
いつものイニャリトゥ監督作品を期待すると、あれ?と思うかも。
ギジェルモ・アリアガ脚本のが好きなのかも。
エドワード・ノートンは、エドワード・ノートン節全開で良かった。
狂気じみたカッコ良さが最高。
語りたいことがたくさんある映画。
でも、観ていて非常に疲れるので、何回も観たいとは思わない。